このページは、その「最初の一歩」だけを書いています。 実際に神社でイベントを開き、地域を巻き込んできた主催者への取材から、 順番と、頼み方と、つまずいたときの一手を取り出しました。

このページの内容は、協賛サポーター・小川貴之さんへの取材(2026年8月)と、 実際に使われた企画書をもとにしています。手順を一般論で埋めた箇所はありません。 なお、関係する学校名は、在校する子どもたちへの配慮として伏せています。
OVERVIEW
いきなり社務所を訪ねる前に、間に人を立てられないかを考えます。地域で何か活動をしている人なら、たいてい誰かが宮司さんとつながっている。神社は、地元との関係なしには成り立たないからです。

どこかで宮司さんと接点がある人は、地元に必ずいます。 そうでないと、神社って成り立たないんです。
— 小川貴之さん(協賛サポーター)
つてが本当にない場合の入口が、区役所の地域振興課です。 企画を持ち込めば、自治会長までは必ずつないでくれます。役所の仕事として、伝えるところまではやってくれる。 そこから会ってもらえるかは、こちらの伝え方しだいです。
最初の連絡は電話から。メールアドレスをうかがって、「企画書をお送りしてよいですか」とつなぎます。 そして——紹介者がいると、相手の対応そのものが変わります。
間に紹介してくれた人がいると、その人の顔を潰すわけにいかないから、対応が丁寧になるんですよね。
— 小川貴之さん
これは、多くの人が逆をやっています。丁寧なつもりで先に資料を送る——そのケースのほうが、断られてきました。
なぜ、先に送ってはいけないのか
先に渡すと、相手は会う前に「やるか、やらないか」を判断してしまいます。 考える時間を与えるほど、断る理由が育つ。 紙だけでは伝わらない熱量が、その判断には乗りません。
うまくいったケースは、当日持参したケースです。 先に共有してしまうと、思いが伝わらないまま断られることがある。
— 小川貴之さん
アポイントが取れれば、たいてい1時間はもらえます。20〜30分で終わることもありますが、 「少しお話を聞いてください」と時間をもらい、その場で企画書を開く。そこからが本番です。

下は、毎年開催されているキャンドルイベントの企画書の構成です。 目を引くページを先頭に置きたくなりますが、順番は逆になっています。
開催概要
目的・日時・場所・入場料・内容・主催/共催。 目的は箇条書きで4つ前後。相手の事業と重なる項目を先頭に置く。
安全のことここが要
火を扱うなら、ここが相手のいちばんの気がかり。 消火器の数、常駐スタッフ、燃えない養生。逃げずに数字で書く。
スケジュール
開催までの準備と、当日の時間割。 搬入から完全撤収まで書くと、任せられる相手だと伝わる。
当日のイメージ
写真やイラストは、いちばん最後。 先に見せると「絵空事」に見え、順に積み上げた説得が崩れる。
+ 相手によって、付けたり外したりするもの
会場を設営する相手に、協賛の話は要りません。同じ一式を全員に配らず、相手の関心の外は抜く。
火を扱うイベントでは、相手がまず気にするのは安全です。 消火器を何か所に置くか、常駐スタッフを何人立てるか、燃えない養生をどう敷くか。 使う燃料の引火点まで表にして載せている企画書もあります。 ここを具体的に書けているかどうかで、「任せられる相手か」が判断されます。
協賛と聞くと現金を思い浮かべますが、場所を貸してもらう、告知を手伝ってもらう、人を出してもらう——それらも立派な協力です。そして、どれも同じように名前を載せられます。

あるイベントでは、鉄道会社のグループから現金は一円も受け取っていません。 けれど商業施設のデジタルサイネージに広告を出してもらい、本来は有料の駅前広場を無償で使わせてもらっています。 告知にはその名前が大きく載りました。
場所を借りるときの聞き方が決まっています。「場所代をお支払いします。おいくら必要ですか」と、こちらから先に聞く。 企画書に開催の目的が立っていれば、「今回に限っては無償で」という返事を引き出しやすくなります。 値切る交渉をしていないので、相手も社内で通しやすい。
ロゴを載せるときは、どの名義がよいかを必ず確認します。 会社名ではなく、特定の事業所やブランドの名前を指定されることがあるからです。 相手にも「この事業を通じて、地域のこんな活動を支援しました」と社内外に報告する事情がある。 その報告に使いやすい形で載せると、次の年も続きます。
協力してやっていますよ、というアピールになるんです。 だから、少しの協力でも、ロゴを載せる。
— 小川貴之さん
子どもたちの絵をキャンドルの覆いにする企画で、2〜300点を見込んでいました。開催一週間前、集まっていたのは約20点。ここからの動き方が、いちばん参考になります。

開催1週間前
締切。集まったのは約20点
在籍600人の小学校。宗教施設での開催に保護者から声が上がり、自由参加に切り替えていた。見込みは2〜300点だった。
その日のうち
近くのもう一校へ、ダメ元でFAX
「作品が集まらなかったので、一日二日でもやってもらえませんか」。飾らず、事情をそのまま書いた。
翌朝9時
電話をしたら、快諾
断られる前提だった。判断も連絡も、主催者ひとりでやっている。
開催前日
1〜2日で28点。前の学校を上回った
在籍700人超の学校。急な依頼でも、動く先は動く。
引くに引けなかったんです。地元を巻き込んでしまったから、20じゃしょぼいよなと思って。
— 小川貴之さん
頼み方に、特別な工夫はありませんでした。 「作品が集まらなかったので、一日二日でもやってもらえませんか」と、事情をそのまま伝えています。 取り繕わずに正直に言ったから、相手も動けた。
ダメ元でも、電話をしてみる。
断られる前提で頼んだ相手が、引き受けてくれることがあります。
チラシを配った数と、実際に人が来た理由は一致しません。同じ手間をかけるなら、効くところにかけたい。
効いたこと
もともと人が集まる日に、乗せてもらう
本村神明社(横浜市旭区)の節分祭で、豆まき会場の一部を借りる形にしました。ゼロから集客せず、季節行事に相乗りする。豆まきに来た人と、作品を見に来た人が互いに流れました。
つくる側に、子どもを入れる
中学校の美術部に会場づくりを頼みました。すると生徒がその場から家族に電話をかけて呼びはじめる。担い手にすると、告知する人にもなります。
学校を通す
作品を募集する形にすると、子どもが出展者になり、家族が見に来ます。もっとも人が動いた経路でした。
思ったほどではなかったこと
公共施設へのチラシ配架
区役所などに置いてもらっても、来てくれるのは窓口の担当者など、すでに関係のある人が中心でした。無駄ではありませんが、これだけでは人は動きません。
肩書きや、大きな名前
有名な団体の名前より、応援してくれている人に情報を多く渡すほうが広がりました。理解している人が、周りに自分の言葉で伝えてくれるからです。
応援してくれている人は理解者なので、その人が周りにいろんな情報を伝えてくださる。 草の根運動みたいな感じですよね。
— 小川貴之さん
AND THEN
翌年の企画書には、前年の実績を載せるページが一枚増えていました。 来場者数、灯したキャンドルの数、そして——廃食油を使ったことで減らせた二酸化炭素の量。
この一枚があると、相手は社内で説明しやすくなります。 企業には「地域のこんな活動を支援し、こんな成果がありました」と報告する事情があり、 数字はそこで効きます。一年目に記録を残しておくことが、二年目の交渉材料になる——これが、続けている人と一度きりで終わる人の差になっていきます。
だから私たちは「灯した記録」というページをつくりました。 開催報告ではなく、火が灯るまでの過程と、あとに残ったものを書き残す場所です。 次にやる人の道しるべになり、あなた自身の次の一年を助けます。