協賛
協賛や後援をお願いするとき、多くの人が「まず資料を送っておく」という段取りを踏みます。相手の時間を奪わないための配慮ですし、礼儀としても自然です。
けれど協賛サポーターの小川貴之さんは、そこにきっぱりと線を引きます。
「企画書は、事前に共有せずに当日持参した方がいいです」
理由を聞くと、返ってきたのは経験からの一言でした。
「今までうまくいったケースは、当日持参したケースです。断られたケースは、先に情報共有したケースの方が断られやすかった」
丁寧なつもりでやっていたことが、実は自分の企画を弱くしていた——順番を変えるだけで結果が変わるのなら、知っておきたい話です。
なぜ、先に渡してはいけないのか。小川さんの説明は、人の判断の仕組みそのものに触れています。
「共有しちゃうと、向こうによしよしを判断させてしまうというか。向こうに考える時間を与えない方がいいですね」
紙は、書いてあることしか伝えません。会って話せば伝わるはずの熱量や、質問に答えながらほどけていく誤解が、紙だけの状態では届かない。相手は届かなかった部分を「わからないもの」として処理し、断る理由を静かに積み上げていきます。
こちらが良かれと思って送った数日間が、相手の中で「見送る理由を探す時間」に変わってしまう。だから、渡すのは会ったその場で、という結論になります。
とはいえ、いきなり企画書を持って訪ねるわけではありません。先に取るのは、アポイントだけです。
「お時間取れませんか、というところから行って。だいたいアポを取ってくれると、一時間は取ってくれるんです」
一時間まるごと使い切る必要はありません。話が二、三十分で終わることもある。大事なのは、資料ではなく自分が先に相手の前に立つ、その順番です。
「がっつり一時間とは決めなくても、少し話を聞いてくださいという感じで、企画書を持参して企画内容を伝える。そこからです」
では、当日開く一枚には何をどの順で書くのか。小川さんが実際に使っている企画書は、こういう並びになっています。
まず、開催概要。目的、日時、場所、入場料、内容、主催と共催。ここで「何のためにやるのか」を先に置きます。
次が、安全対策です。
「一番はやっぱり安全面かな。キャンドルを扱う上で、運営側が気にするところなので」
火を扱うイベントなら、相手がまず心配するのはそこです。消火器を何か所に置くのか、常駐するスタッフは何人か、燃えないシートをどう敷くのか。使う燃料が何度で引火するのかまで表にして載せている年もあります。気にされる前に、気にしている点を自分から出す。
そのあとに、開催までのスケジュールと当日の時間割。搬入から完全撤収までを書きます。
そして最後が、当日のイメージです。
「最初にイメージを持っていくんじゃなくて、イメージは一番最後です」
写真やイラストのページは、いちばん見栄えがします。だからこそ先に見せたくなる。けれど順番を逆にすると、絵空事から始まることになる。目的、安全、段取りと積み上げた最後にイメージが来るから、「これは実現する話だ」として受け取ってもらえます。
もうひとつ、小川さんが当たり前のようにやっていることがあります。相手によって、資料の一部を抜くのです。
「協賛メニューとか当日の図面とかは、相手によってつけたりつけなかったりです。会場の設営側は、別に協賛の情報が必要ないので」
企画書は自分のためではなく、相手が判断するための紙です。関心の外にあるページが混ざっているほど、大事なページの密度は薄まる。ひとそろい作っておいて、渡す直前に抜く——それだけのことですが、受け取る側の読みやすさはずいぶん変わります。
この構成は、小川さんが試行錯誤の末に一から編み出したもの、というわけでもありませんでした。うまくいっている先輩たちの企画書が、だいたいこういう書き方をしていた。それを見習った、と本人は言います。
うまくいっている人の型を、そのまま借りる。自分でゼロから考えない。これも立派な進め方です。
これから初めて企画書を書く人にとっては、この記事の順番——概要、安全、スケジュール、イメージ——をそのまま真似ることから始められます。中身は自分の企画のもので埋めればいい。順番は、借りものでかまいません。
そして、書き上がった一枚は送らずに、鞄に入れて会いに行く。始まりは、そこからです。