協賛
あるキャンドルイベントの告知物には、地元の大きな鉄道グループの名前が並んでいます。協賛金をいくら包んでもらったのだろう——そう思って聞いてみると、答えは意外なものでした。
「相鉄からは一円ももらってないんですよ」
けれど商業施設のデジタルサイネージには広告を出してもらい、本来は使用料のかかる駅前の広場を、無償で使わせてもらっている。協賛サポーターの小川貴之さんは、それを迷いなく「協賛・協力」として扱います。
「お金を受け取ってなくても、場所を貸してくれたとか、手伝ってもらったとか、告知を協力してもらったとか。そういうのはもうちょっと大きめに、少しの協力でも、ロゴを載せる」
協賛とは現金のことだと思っていると、この発想は出てきません。けれど手を貸してくれた相手の名前を掲げることは、相手にとっても価値のあることでした。
では、どうやって会場費を無償にしてもらったのか。ここに、真似できる聞き方があります。
「こっちからタダにしてくださいという交渉をしてるわけじゃないんですよね」
小川さんが使うのは、まったく逆の一言です。
「場所代をお支払いしますんで、おいくら必要ですか、と聞くんです。そうすると、今回に限っては無料でいいです、みたいな形になったりする」
値切っていないから、相手も社内で通しやすい。「支払う用意があります」と先に示した相手に対して、無償を申し出るのは、相手側の判断であり厚意になります。こちらから頭を下げて引き出した値引きとは、その後の関係がまるで違います。
もちろん、これが成り立つ前提があります。企画書に、何のためにやるのかがきちんと立っていることです。
「開催目的は必ず載せてるので、そこに共感してもらっているから開催している。それはもう、どこにでも説明できるわけですよね」
協力してもらえることになったら、次にやることがあります。ロゴを載せる許可を取るだけでは足りません。
「こういうロゴを使ってくれ、という指定があったりするんです」
先ほどの鉄道グループの例では、会社としての正式名称ではなく、その中で運営している事業ブランドの名前を載せてほしい、という指定がありました。告知物には、その名前が大きく入っています。
なぜ、相手には名義のこだわりがあるのか。小川さんの説明で腑に落ちました。
「その事業所を通じてこういう事業にサポートしました、という報告をするためにも、適切なロゴというのがある。それをあらかじめ聞いておく」
企業には、社内外に「わたしたちは地域のこんな活動を支えました」と報告する事情があります。その報告が通りやすい形——どの部門の実績として計上できるか——が、名義に表れている。こちらが気を利かせて正式社名を載せるより、相手に選んでもらったほうが、相手の役に立つのです。
そして役に立った協力は、翌年も続きます。
ここまでの流れを並べると、ひとつの型が見えてきます。
まず、企画書に開催目的を書く。誰のために、何のためにやるのかを、共感できる言葉で立てる。次に、場所や協力をお願いするとき「おいくらですか」と先に聞く。無償や協力を申し出てもらえたら、掲載する名義を相手に確認する。そして、一円も受け取っていない相手も含めて、協力者として名前を掲げる。
この順番なら、どこにも無理がありません。相手を口説いたわけでも、値切ったわけでもなく、目的に共感してくれた人と、お互いに使える形をつくっているだけです。
これから初めてイベントを開こうとする人にとって、いちばん重い思い込みは「先に資金を集めないと動けない」ではないでしょうか。
けれど、ここまで見てきたとおり、協賛は現金だけではありません。場所を貸してくれる人、告知を手伝ってくれる人、当日に人を出してくれる会社。そのすべてが協力であり、名前を掲げるに値します。
必要なのは、まず目的の立った一枚を持って会いに行くこと。そして「おいくらですか」と、正面から聞いてみることです。